ミーハー主義。

エンタメ業界で働く私が、アイドル・テレビ番組・映画などについて書きます。

NGT48『世界はどこまで青空なのか?』のMVで見えるアイドルの絶望

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<期間限定>NGT48『世界はどこまで青空なのか?』MUSIC VIDEO Full / NGT48[公式] - YouTube

アイドルは”希望”を与える存在だけど、常に消費される存在でもあり”絶望”がつきまといます。スキャンダル、推し変、選抜落ち、脱退・・。

2017年の年の瀬に衝撃的なMVに出会ってしまいました。NGT48の『世界はどこまで青空なのか?』です。アイドルの”希望”と”絶望”を切り取った素晴らしい名MVだったので紹介しようと思います。

 

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曲の概要

NGT48は2015年に誕生した新潟を拠点に活動するアイドルグループ。メンバーは有名どころだと、柏木由紀と北原里英のAKB48兼任組とバラエティで活躍する中井りか、そしてこのMVの主人公である荻野由佳です。

『世界はどこまで青空なのか?』は2nd singleで、2017年12月6日に発売されました。作詞はもちろん秋元康、作曲は斉門です。前作は『青春時計』で、ラップもありサビもキャッチーで明るい一曲でした。

この楽曲とMVは、荻野由佳の魅力や生き様を最大限に写し、彼女のために作られています。

そしてMVの監督は山戸結希。『溺れるナイフ』や『あの娘が海辺で踊ってる』、MVであれば乃木坂46の『ハルジオンが咲く頃』などを監督しています。思春期の女性の刹那で儚い心境を撮るのがとにかく上手い方。

荻野由佳という一人の女性とアイドル

荻野由佳という人間の、”希望”と”絶望”がこのMVのテーマです。

本間日陽に促された荻野は「私ずっとずっとアイドルになりたかった」と”希望”を叫びぶモノローグから始まります。

次のシーンで、北原里英と柏木由紀というAKB48で華々しい活躍をしてきた二人にその”希望”を伝えると、「”絶望”しないって言える自信ある?」とのきたりえの返答。

サビでは、荻野が踊っていると他のメンバーも踊ってくれるようになります。音量をあげると「ハアハア」というダンスの息遣いが聞こえてきます。”希望”を持って必死に挑むと周りも巻き込んでムーブメントになるというメッセージ。

そして、制服から黒い衣装に着替えてサビを踊る、つまり普通の女子高生からアイドルになっていたことを示唆し楽曲は終了。

MVとしては、ここで終わりでもいい。

 ここまででも十分に”希望”を抱くアイドル、というのは完成しています。しかし、エピローグまで見ると監督や楽曲の真意が伝わってきます。

 

f:id:shone-3:20171228132812p:plain(<期間限定>NGT48『世界はどこまで青空なのか?』MUSIC VIDEO Full / NGT48[公式] - YouTube)

それはすなわち、アイドルの”絶望”を描くということ。

制服姿(=普通の女の子)の荻野と黒い衣装(=アイドル)の荻野が交互に、全く同じセリフを叫びます。「この空の下で歌って踊れていれば、部活も彼氏なんていらないよ」「私は人間に生まれてきたんじゃない、アイドルに生まれてきたの」という言葉です。

制服姿の荻野は笑顔で”希望”を持ってこの言葉を放ち、黒い衣装の荻野は泣きじゃくりかすんだ声で”絶望”のままこの言葉を絞り出します。

荻野由佳はavexのオーディションに落ち、AKB48のオーディションも4回落ち、乃木坂も落ち、ドラフト会議にてようやくアイドルへの切符を掴んだ”絶望”を合わせ持ったメンバーです。まだ18歳にして多くの挫折をしています。

彼女のキャッチフレーズは「なんでもな〜い なんでもな〜い 何があってもへこたれな〜い!」で、まさに彼女の”希望”を形にした言葉。

「人に夢と書いて儚い」とはよく言ったもの。荻野由佳という人間で、アイドルがもつ”希望”と”絶望”の狭間で揺れる少女の刹那の輝きが私たちを照らします。

 

「青空」と「希望」でNGTの曲にした

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(出典:乃木坂46 (@nogizaka46) | Twitter)

この楽曲の優れたもう一つの点は、NGT48が「青空」「希望」を使いながら自分たちの曲にしたところです。

秋元グループで「青空」と「希望」といえば「何度目の青空か」と「君の名は希望」という代表曲を持つ乃木坂46ですからね。

荻野由佳という人間を使うことで、乃木坂が見せない”絶望”の影を引き出していきました。「青空」を「駆け巡る鳥が希望だ」という歌詞に、この一瞬を生きる力強さが現れています。ぜひその姿をMVで見て欲しいです。

 

まとめ

以上、NGT48『世界はどこまで青空なのか?』を大絶賛する記事でした。今まではノーマークでしたが、これからNGT48にも注目していこうと思います。AKBグループも全く捨てたもんではない。